Maltine Records 10周年記念イベント「天」を本物の音楽好きたちが逃せない理由

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Maltine Recordsの10周年記念イベント『天』が、8月2日に東京・代官山のUNITとSALOONで開催される。初期メンバーから、最近リリースしたてのアーティストまでのべ27組が出演。レーベルの顔がほぼすべて揃うので、非常にアツくなること間違いなしだ。
このメディアを読んでいる人のなかには「え?何そのレーベル?」と思う方が多いかもしれない。しかしこのレーベルが10周年を迎えたという事実は、”10(テン)年代”の音楽シーンにとって最重要なポイントであるともいえる。そこでイベントに先駆け、このレーベルが10周年を迎えることがいかにヤバいことなのかをお伝えしようと思う。

フリーダウンロードの新世代レーベル・Maltine Records(マルチネレコーズ)

Maltine Records(マルチネレコーズ:以下マルチネ)とは、2005年に突如として現れたインターネットレーベルだ。今や日本を代表するネットレーベルとして、150近くものタイトルをリリースしている。

代表的なレーベル在籍・出身者としては、昨年メジャーデビューしたベッドルームミュージックのトップランナー・Tofubeats(a.k.a. dj newtown)や、多岐にわたるジャンルを網羅してあちこちのイベントで旋風を巻き起こしているOkadadaが挙げられる。
また、過去のアーカイブにはSugar’s campaignのAvec Avec(長髪じゃない、メガネの方)や、インドネシアのシティポップバンド・ikkubaru、でんぱ組.Incの夢眠ねむやアイドルユニット・東京女子流など、さまざまなジャンルのアーティストが名を連ねる。
そのハイセンスなラインナップ以上に皆様に注目してほしいのは「全タイトル無料・クリエイティブコモンズライセンスは非営利表示」であるところ。オンデマンドでストリーミング再生可能な無料アプリ(ID登録も不要!)も配信されていて、音楽を楽しむ環境としては何故無料なのか頭が混乱する程のハイクオリティ。これだけ多くの楽曲が無料で快適に楽しめるという点では、実に斬新で画期的なレーベルである。

平成生まれのDJ・Tomadが創り上げた「拡散力のあるレーベル」

このレーベルを立ち上げたのは、自身もDJとして活躍するTomad。2005年の高校1年生のときに、彼は高校の同級生であり現在トラックメイカーとして活動するsyemとともにマルチネを始動させる。過去のインタビューで、彼はレーベル立ち上げのきっかけをこう語る。

僕が音楽を始めた2005年くらいに、自分の作った音楽を出す場所として始めたんです。その頃はブレイクコアという、BPMが速くて、サンプリングが高速で繰り返されるみたいなものを作っていて。(中略)ライブをやるのと変わりはなかったと思います。最初からフィジカルでというのもハードルが高かったし、ネット上の好んでくれそうな人に届けるにはネットに上げるのが一番早い。海外にはネットレーベルがいくつかあって、それを見て自分も落としたりしていたし。

しかし、2005年は日本でもiTunesがローンチされた年。音楽配信サービスの黎明期であったからこそ、「発表の場」としてネットを利用するなら課金制にしてもよかったはずだ。しかし、彼は「コピーライト」と「拡散」の観点から無料ダウンロードの道を選ぶ。

そもそも今のインターネットの原理上、コピーは歯止めが効かないわけですよね? いくらプロテクトをかけたとしても。それでお金を取るということは、リスナーに制限をかけて音源を渡すことになる。それはもう無理なんじゃないかと思ったんですね。
(中略)本当にいい音楽だったら、どんどん人に渡して欲しいし、広がっていくはずなんです。だから無料にして、どんどんアーティストの知名度を上げたほうがいいと思うんです。音源を売ったら多少は儲かるかも知れませんが、たかがしれているので。

今月は「LINE MUSIC」や「apple Music」など、音楽聴き放題サービスのリリースが連続した。

2015年にもなってやっと大手企業が「拡がりやすい音楽配信サービス」に目をつけたのに対し、Tomadはなんと10年前から日本で拡散型のストリーミングサービス事業をネットレーベルとして着手していたのである。

発想の根底にあるのは現代の音楽業界のシステムが抱える問題。いま仮にメジャーデビューを飾りCDをたくさん売ったとしても、最終的にアーティストに残る額は収益のたった数パーセントである。自主制作を出して1枚あたりの利益率をあげたところで、アーティスト自身の力だけでは500円のCDを売るのも大変。

そんなこんなで「楽曲をリリースすること=アーティストの家計を支えること」という方程式が成立しなくなった今、「ライブで儲かるならいっそ無料で配信してもいいじゃん」という考えに至るのは(そこに至るまでの発想力は別として)ある意味自然な成り行きなのだ。

マルチネは「課金に頼らずシステムを10年間継続し続け、かつミュージシャンをコンスタントにブレイクさせている」という意味で、小規模ながらも日本の音楽業界の脆弱で怠惰な部分を叩き潰すポテンシャルをもったレーベルとして降臨し続けているのである。


ベッドルームからインターネットというストリートへ発信する

ただ、このサービスがここまで継続したのも、ベッドルーム(自宅)の中だけで楽曲制作をするアーティストがブレイクする環境が出来上がったからという話。2005年にYouTubeという動画投稿サイトが誕生し、2007年には「初音ミク」というDTM(デスクトップミュージック)文化を拡張する音楽ソフトが配信される。さらに2007年には音楽ファイル共有サービス・SoundCloudが登場。それら起爆剤の投入により、自宅録音文化は爆発的に広まった。
無駄に高いレコードスタジオやプロの音響係を必要とせず、おまけに歌唱力が完璧な歌姫を探すリスクもなくなった。しかもインターネットにつながってさえいれば、作品を発表する環境はある。マルチネ登場の時期は、まさに「一億総ミュージシャン」たりうる時代の黎明期と重なっていたのだ。言い換えれば、マルチネに属するアーティストは「無料配信でも生きていける」ような環境で進化を遂げた「特殊変異」の世代でもある。
ちなみにそんな特殊変異たちによる8月2日の件、出演者は以下の通りである。

tofubeats

オノマトペ大臣

okadada

DJ WILDPARTY

banvox

PARKGOLF

Avec Avec

Pa’s Lam System

guchon

iserobin

madmaid

Gassyoh

dust.c

三毛猫ホームレス

Tomggg

Carpainter

Gigandect×天川宇宙

Syem

コバルト爆弾αΩ

Yoshino Yoshikawa

Hercelot

LLLL

Silvanian Families

fazerock

PPS

imdkm

Gonbuto

レーベルの顔となっているtofubeats、オノマトペ大臣、okadada、DJ WILDPARTY、Avec Avecをはじめ、いまや世界を舞台に活躍するbanvox、アルバム『par』をリリースしたPARKGOLF、キラキラなポップチューンで人気を博すTomggg、「KANEKURE」の印象が強すぎる(すみません)三毛猫ホームレスなど、知る人ぞ知る豪華な面々が顔をあわせることとなる。
なかには「誰も知らない…!」という読者もいるだろう。しかし、どうかこの記事を読んでくれた一人でも多くの音楽好きに、この歴史的な瞬間に立ち会ってほしい。多分後世で自慢できるだろうし、生で見なければこの文化は発展しないから。

Maltine Records 10周年記念イベント 「天」

場所:代官山 UNIT + SALOON
日時:8月2日 (日)
OPEN:15:00
料金:前売り 3300円 / 当日3800円
公式サイトはこちら

おわりに

チケットストリートでは、TofubeatsSugar’s Campaignをはじめとした邦楽アーティストのチケットを多数取り揃えております。多分後世で自慢できる系のチケットが見つかると思うので、ぜひチェックしてみてください。

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